31.光

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「わぁ、雰囲気のある喫茶店だね。店内は広いんだぁ」  カランとドアベルを鳴らし、ドアが閉まると、春香が店内の静けさに声のトーンを下げた。  カウンターに春香と並んで座ると、京也は俺には視線を向けただけ。春香には愛想よく微笑んだ。 「お前もホットでいいんだっけ? 」  俺が春香にそう聞いても 「……うん、はい」と、答えるだけ。  ……なんだぁ? 「どうぞ」  京也が目の前にコーヒーのカップを置いた。 「い、頂きます」  ……なんだぁ?やっぱり春香が何か変だ。 「美味しい」 「良かったです」  チラリと京也を見ては俯く。もう一度チラリと京也を見ては俯く。 「ぶっ」  吹き出した俺を真っ赤な顔で睨む。 「ちょっと、柊晴くん! 」  小声で怒ってる。……ま、紹介してやるか。京也は絶対に春香の事を俺の新しい彼女だと思ってるだろうから、それも否定しといてやるか。京也の手が空いたタイミングで 「今日、大学時代の飲み会で、絡まれてた俺を助けてくれたんだよね。これ、春香」  そう言って紹介した。 「……牧野春香です。柊晴くんの同級生です」 「あ、こっちは京也ね。京也は俺の高校の同級生。彼女いないはず。春香も彼氏いないはず」 「……」 「……」  京也が春香が俺の彼女じゃなかった事になのか、好意に気づいたのか、少し驚いた目をしたが、直ぐに微笑む。 「宜しくね、春香ちゃん」 「あ、はい。宜しく、お願い、します」  可笑しくなって、カウンターをバンバン、叩くと 「うるさいな、お前。本当この店に不向きだわ」京也が呆れた。だけど、春香の好意には、まんざらでも……なさそうだった。
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