2189人が本棚に入れています
本棚に追加
「わぁ、雰囲気のある喫茶店だね。店内は広いんだぁ」
カランとドアベルを鳴らし、ドアが閉まると、春香が店内の静けさに声のトーンを下げた。
カウンターに春香と並んで座ると、京也は俺には視線を向けただけ。春香には愛想よく微笑んだ。
「お前もホットでいいんだっけ? 」
俺が春香にそう聞いても
「……うん、はい」と、答えるだけ。
……なんだぁ?
「どうぞ」
京也が目の前にコーヒーのカップを置いた。
「い、頂きます」
……なんだぁ?やっぱり春香が何か変だ。
「美味しい」
「良かったです」
チラリと京也を見ては俯く。もう一度チラリと京也を見ては俯く。
「ぶっ」
吹き出した俺を真っ赤な顔で睨む。
「ちょっと、柊晴くん! 」
小声で怒ってる。……ま、紹介してやるか。京也は絶対に春香の事を俺の新しい彼女だと思ってるだろうから、それも否定しといてやるか。京也の手が空いたタイミングで
「今日、大学時代の飲み会で、絡まれてた俺を助けてくれたんだよね。これ、春香」
そう言って紹介した。
「……牧野春香です。柊晴くんの同級生です」
「あ、こっちは京也ね。京也は俺の高校の同級生。彼女いないはず。春香も彼氏いないはず」
「……」
「……」
京也が春香が俺の彼女じゃなかった事になのか、好意に気づいたのか、少し驚いた目をしたが、直ぐに微笑む。
「宜しくね、春香ちゃん」
「あ、はい。宜しく、お願い、します」
可笑しくなって、カウンターをバンバン、叩くと
「うるさいな、お前。本当この店に不向きだわ」京也が呆れた。だけど、春香の好意には、まんざらでも……なさそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!