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あれからどうなったのかは知らなかったが、次に京也の店に行くと
「付き合う事になった」
京也がそう言った。
「はは、そっか。いいんじゃねーか、明るくて良い子だろ? 」
「……まあ……な。そのうち向こうから離れるだろ」
この時の京也の言葉にひっかかったものの、春香が京也から離れる事は無かった。
京也の性格からして、春香の粘り勝ちってとこか。
……奥の席に座っていた女性がカウンターにコーヒーを取りに来て、京也と一言二言話すと、トレーを持って席へ戻った。コーヒーの邪魔をしない程度にふわりと彼女の香りが残る。
「……若い女性も来るんだな」
京也の店は古くからの常連客が多く、年齢層も高い。
「ああ、あの子は春香の友達だよ。春香とここで待ち合わせしてるんだ。……もう来るかな」
京也が時計に目をやるのと同時に
……カラン
ドアベルの音とともに春香がここに入ってきた。京也ににっこり笑って、その前にいる俺に気づくと歩み寄って来た。
「柊晴くんも来てたの」
「ああ、京也から聞いたけど? 」
からかうようにそう言うと、真っ赤になって
「あ、ありがとう……ここに連れてきてくれたおかげで……あ、今日は友達と待ち合わせで」
「うん、もう来てるよ光ちゃん」
「あ、本当だ。行くね、ありがとう柊晴くん」
春香はそう言うと先程の女性の座る奥の席へと向かった。
あきら……へえ、女の子にしては珍しい名前だな、ぼんやりそう思っていた。
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