32.ドアの外

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「……知りたいと、思ってるの……だから……」  恥ずかしそうに微笑んだ彼女に、焦るつもりもなかったのに、性急に抱き締めた。軽いと思われたくはないというのに、しかも、まだ店の前だというのに。 「ごめん、我慢出来なかった」 「……うん……どうしよう、私も」  光は手の平を外に向けて手の甲で赤くなった頬を冷やしながら俯く。 「……軽いと、思われたくはないんだけど……」 「……軽い人は、女を抱き締めたくらいで泣かないでしょう? 」  そう言われて慌てて顔を背けた。  多分、色々……頭と身体がバグを起こしてるんだと思うほど、色んなとこが、駄目だ。多分、この日は100回は“好きだ”って言って光を笑わせた気がする。光に会った日からずっと……俺の感情面はシステムエラーだ。
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