32.ドアの外

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 それから……  逆に100回は言われてるだろう台詞がこれ。 「もう、ちょっと落ち着いて」 「ごめん、何かもう、止まらない。嬉しくて」  27にもなってどうしていいのか分からないほど、夢中だった。 「どうしたんだ、お前」  京也からはこの台詞。  春香からは 「人格変わってるわよ」そう言われた。  京也も、春香も、俺の過去の恋愛を知っている。分からない。自分でも。こんな自分なんて、知らなかった。 「ね、そんなに格好いいんだから損しちゃうよ」  そう言った光はこんな俺をどう思っていたのだろうか。 「何が? 」 「余裕のある、落ち着いた男がモテますよ」 「そんな、男が好きなのか? 」 「……素敵だなとは……思う。女の人はみんなそうだよ」 「ふーん……」  つまり、今の俺は、好きじゃないのか?  女の人はみんな?俺は1人でいいけど。俺は光さえ好きでいてくれたらいいけど。
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