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何があっても守りたい。心からそう思っていた。何があっても、傍に。手に入れば、浮かれていられるわけでもなかった。むしろ……不安は募るばかり。
分かっていても、努力で何とかなるものではなかった。温度差は埋まらないまま……流石に不安を本人にぶつけないくらいの正常な判断は出来た。まぁ、嫌われたくなくて、だけど。
不安をぶつける場所は決まっていた。
そこへ行くと必ずと言っていいほど、春香もいた。京也は休みなくほぼ店にいる。だから、京也に会いに来ているのだろう。
カウンターに行儀悪く頬杖ついてる俺に
「あの子、柊晴くんに夢中だよ」
春香がそう教えてくれた。
「全然違う! 今までと。表情とか、目とか、もう明らかに! 恋してるよ。いやー、変わるもんだわ」
「……彼女が? 俺に? 」
「うん。夢中」
嬉しさと信じられなさで、緩む顔を隠す事なく
「マジで!! 」
声を上げて喜んだ。
「うるせぇ、お前。本当、この店に不向きだわ、帰れ、帰れ」
そう言った京也の目が優しい。さっさと、光の所へ行けって、言ってる。
今日はもう会ったというのに、結局また会いたくなって、光の家へと向かった。
「……どうしたの? 」
そう言って、迎え入れてくれる光に
「会いたくなった」そう伝えた。
「さっきまで会ってたのに」
「うん、でも、会いたかった」
「変な柊晴」そう言って笑う。
「とっくに変なんだ……」
それは、光に出会ったあの日から。
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