32.ドアの外

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 この幸せを形にしたかった。迷いは一切無かった。  光に言ったらきっと“いらない”って言われそうだから……勝手に事前に用意した。“永遠に輝く”と言われる石の乗った指輪。この気持ちも同じように“永遠”だと思うから。  “まだ早くない?”  とか、言われそうだけど。いいじゃないか。俺はすぐにでも言いたかった。これでも待った方なんだ。  いつも通り、気兼ねなく過ごす部屋で言いたかった。俺にもたれて本を読む光の手から本をスルリと取り上げると 「あ! もう、今いいとこなのに」  そう言って怒る光をベッドに転がす。じゃれるようにキスすると、指にリングを通した。俺のキスに応えてた、光の動きが止まり、左手の薬指に目が移る。  それから、パッと俺の方に顔を向けた。見開かれた目にうっすらと涙が溜まり、それに俺も鼻の奥が痛くなる。  俺の身体の上に光を乗せたまま……抱き締めたくなる気持ちも、キスしたい気持ちも抑えて……顔を見ていたかったから。 「永遠に、俺と一緒にいて下さい」 「はい」  光の目に溜まっていた涙が俺の上に降る。
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