33.白いページ

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 その言葉を待って、おもいっきり抱き締めた。  “まだ早くない?”  なんて、光は言わなかった。ただ、『はい』って言ってくれた。 「ねぇ、ここは……私が…泣…くとこじゃない? 」 「……おかしいんだよ、俺。光と出会ってから、嬉しくて泣ける」 「……うん、私も」  二人で、ベッドの上、泣きながら、笑った。 「綺麗ね」  何度もその指輪を見てはそう言った。嬉しそうに笑いながら。それを見て、また、泣いた俺に 「もう! 」  そう言って、光もまた泣いた。だけど、指輪は失くしたら、とか傷が……とか言ってすぐにしまいこんだ。なぜか俺のクローゼットの引き出しに。 「何で俺の引き出しなんだよ」 「だって、もう私の家にもなるじゃない? ここ。だから、ここは私の引き出し」  嬉しそうな光の顔も、この日の気持ちも一生忘れない。嬉しくて、これほど泣ける事を初めて知った。
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