33.白いページ

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 プロポーズで渡した指輪をつけて過ごしてくれたのは、ただの一度だけ。  やっぱり、あそこの式場がいいと言った彼女とその式場を予約して俺の家に戻った後。 「なー、指輪は? 」 「しまってる」 「何で? してよ」 「傷ついたら嫌だし、勿体ないよ! 式までに失くしたら大変だし」  そう言った光に、指輪を持って来るように言った。不思議そうにする光の薬指にそれをはめた。 「今日だけ。な? 」  光は嬉しそうに頷いた。 「ねぇ、随分寒くなってきたわね」  そう言われ、窓の外を見ると、降りかけていた雪がうっすらと積もる。 「……積もりそうだな」 「嘘でしょ? 」 「あー、滅多にないことだな」  そこから、二人で暖かい部屋の中でくっついて過ごした。 「暗くならないうちに、出掛けた方がいいかな? 」 「ああ、車出すよ」  夕方、そう言って二人で外へ出た。
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