2188人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の方からは為す術もないまましばらく経った頃、光の両親から
「結婚を白紙に戻して欲しい」
そう言われた。
頭を打っているのだから、今後、何か異変があるかもしれないからと。
「僕は、構いません。だから……どうか結婚させて下さい」
何度頼んでもご両親は首を縦には振らなかった。
「光はあなたとの結婚を楽しみにしていました。だけど“知らない男性”との結婚を今の光が望むでしょうか」
つい、1年前までは確実に“知らない男”だった。今は……今もまた光に取っては“知らない男”なのだ。
「……光が思い出せば……」
「柊晴君、申し訳ないが」
つい、数日前までは俺は……光にとって、何だったのだろう、愛し合った日々は。
どこへ……消えたと言うんだろう。真っ白な雪に……全てが消されたのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!