34.誓い

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 どこまでも続く真っ白な風景。木々の枝すらも白い。光と行った北海道の景色を思い出した。何もない。ただ真っ白な場所。  真っ白な雪の中で見る光は、物凄く綺麗だった。  ……夢だったのかと思う。短い短い……綺麗な夢だったのだろうか。  真っ白だ。あの風景と同じ。俺の中も真っ白だった。あの頃と違うのは、暖かい部屋も微笑む光もいないって事だ。  俺はただ一人、ぽつんと真っ白な雪の中で取り残された。 『真っ白な雪に、血の赤が目立っちゃうね』  何度も何度も頭の中であの光景が甦る。白にじわじわと広がる……黒いような赤。 「ふっ、ぐぅ……」  その度に恐怖で吐く。  思い出したくなくて床に寝転がった。光は大丈夫だ。何度言い聞かせても心は恐怖で強張ったまま。
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