34.誓い

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 海からの風が、植物を陽気に揺らす。  それがまるで……  植物までもが喜んでくれているみたいだって光は言った。緑と、色とりどりの花までもが祝福してくれる。ボタニカルなアーチを抜けると、海からの優しい風を顔に受けた。空と海の境目が遠目にぼやけ、空に浮かぶ雲と、建物の白さが一層、青を美しくみせる。  ここを、白いウェディングドレスを着て歩く。そんな未来を1年後に夢見る。  式場の予約はそのまま……打ち合わせの時期と順序を、少し変えてもらった。この場所に、この日は一人で立った。  あの日 『ここがいい!』  風に長い髪をたなびかせ、光は嬉しそうに微笑んだ。  きっと、綺麗だろう。夢みたいに、綺麗だろう。 ここで、ドレスを来た光を……見たかった。どうしても、見たかった。 『ここがいい! 』  そう言った光の願いを叶えてやりたかった。例え、光が覚えていなくても。俺は……覚えている。だから、叶えてやりたかった。
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