34.誓い

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「ちょっと、立ち聞きしちゃったんですけど、聞いていいですか? 」 「ええ、どうぞ」 「光さんは……無事……なんですよね? 」 「ええ、命に別状もありません。後遺症も」  俺の言葉に、目の前の男が長い長いため息をついた。視線をむやみに動かし、何度も瞬きを繰り返すのは、滲む涙を散らす為だろう。心からの……安堵。それが見て取れた。 「失礼ですが、光とは……」 「あ、そうですよね。半年程前から光さんの部署でお世話になってます」 「……半年……ですか」  ……半年ということは、光は彼の事も覚えていないかもしれない。 「いや、正確には……どうだろ。だいたいそれくらいで……なぜですか? 」  それから、光の今の状況を説明した。目の前の男が次第に険しい顔になっていった。 「成る程……ね」  彼はそう言うと、今度は安堵ではないため息をついた。
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