35.計画

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 彼の残した香りは……少し挑戦的でもあり、優しくもあった。  今、光には……“恋人はいない”“好きな男”すらいないのだ。彼は……少し俺に似ているかもしれない。そんな気がした。  女性は皆、落ち着いた男が好きらしい。京也のような?落ち着いた男になりたくてそうしたわけではない。ただ、今はまだ笑えない。それだけの事だ。 光の為?結局は自分の為だったのかもしれない。  恐怖に近い感情。光を失いたくなかった。命がある。それだけで良かった。 なのに、無事が分かるとその次は……光の心が欲しかった。手に入れたはずで、すぐそこにあったものは、俺の手をすり抜けて……誰かの元へ行くのかもしれない。  それが、怖かった。  挙式まで1年。それまでに、どうしても手に入れたかった。手に入れなければならなかった。
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