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それから、光は問題なく会社へ復帰した。伊東が律儀に連絡をくれていた。やはり、光は彼の事も忘れているようだった。多少の違和感はあっただろうが業務に支障はない様だった。
時折、伊東と会って話したりもした。
ホッとした。光の日常が戻った。一人暮らしのサポートは、春香が同居という形を取ってくれた。俺はただ、二人から報告を聞くだけだった。すれ違っても俺に気づかない。いや、俺は光にとって“知らない人間”だ。
触れたい。光に。伸ばしかけた手は、届くことなく所在なく下ろす。
思い出して欲しい。いつか、思い出すかもしれない。俺が、光の恋人だということを。自然に思い出すまで俺は隣にいたかった。光が思い出したその時に、変わらずに隣に居たかった。
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