35.計画

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 引き出しを開ける。そこには持ち主を待つ指輪。それから、約束の証の紙。指輪を手に取ると、ひんやりと冷たい。  入らないって分かっているのに自分の指にはめてみる。第一関節までもいかない。こんなに細かったのか。    あれ。いつの間にか落ちた涙に慌てて婚姻届を折り畳んだ。  濡れては駄目だな。ああ、泣くのも。光は無事だったのだから。ぐいっと手の甲で涙を拭った。  俺がしっかりしなくてどうするんだ。泣かない。次は……泣くなら結婚式で泣こう。そう決めた。  結婚指輪は……“今”の光と……選べばいい。吸った息を吐かずに止めた。  大丈夫だ。何度も何度も繰り返した。  俺は、光を愛している。何があっても。
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