36.出会い

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「はい、これ。目を通して」  俺、京也、それから春香も同じ紙を持っている。そこには事細かに俺達の関係が記されていた。勿論、現実とは違う新たに作られた人間関係だ。 「“私の紹介”これ、光に取ってポイント高いからね」  それには揃って異論はなかった。春香の知り合いである、その事に光は安心感を持っていた。俺と出会ったあの時も。それほどに、光は春香に対しての信頼が厚い。 「“仕事関係の知り合い”? ここ、そうしなきゃならないか? 」 「うーん……その方が大人って感じで安心感ないかなって。何しろ1年で結婚まで持っていくわけでしょ? それに過去を刺激しない方が良いなら全く違う出会いでアプローチの方がいいかなって」  それぞれに、意見を出し会って、変更点は書き込んでいった。 「だいたい、光とは共通の知り合いが多いし、何でも話してるからさぁ、大学時代の知り合いって言っても、あまりいいイメージはないかも」 「何だよ、春香、俺のイメージどんな風に話してたんだよ。だいたいもっと早く紹介してくれてたら……」 「私だって、もっと早く京也くん紹介して欲しかったわよ! 」 「はい、そこ、話が逸れてるわ。ま、いいんじゃないか? 会社関係ってことで……」  京也が落ち着いてそう言った。光は京也の事も忘れている。 「光……京也とは会ったのか? 」 「うん、この前。ね、京也くん」 「ああ、問題ない」  落ち着いた男が好きなら、京也を見てどう思っただろうか、京也を好きになったりは……しないのだろうか。  “春香の恋人”として出会ったというのに、嫉妬心と不安が無いわけじゃなかった。
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