36.出会い

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 詳細が決まると、行動力のある春香らしくその週のうちに決行された。失敗は出来ない。 「柊晴くんに、かかってるんだからねっ」  春香の言葉に頷いた。不安は、ある。だけどやるしかない。 「大丈夫よ、あの子、柊晴くんに夢中だったんだから! 」  春香が俺の背中を強く叩き、笑った。  京也の店を春香と共に出た。ドアが閉まると 「光は、京也の事は……何か言ってたか? 」  つい、聞いてしまう。 「『春香好きそう』って。大丈夫、人の彼氏に興味を持つような子じゃないわ。だけど……ちょっといつもより……“私の彼氏感”出しちゃった。やだわ、何警戒してるんだろ、私」  そう言って、力なく笑う。 「いや、感謝する。俺なんて妬きまくりだ。なんせ“落ち着いた男”だもんな、あいつ」 「私と光ってね、実は全然好みが違うの。食べ物とか……男性のタイプも……私は柊晴くん、無理かな」  春香がいたずらっぽく笑う。 「ん、サンキュー、本当に」 「大丈夫よ」 「ああ」  家に帰ってから、何度も頭の中でシミュレーションした。もう一度、光と出会う。  目の合う日が来る。光の目に俺が映る日が。
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