36.出会い

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「結婚を前提に付き合って貰えませんか? 」  この時になってようやく、光の手に触れた。  光は恥ずかしそうに頷いた。年も年だし、“結婚前提”そう言えば進むのも早い。それに、真面目な交際であることも伝わる。  “その日”は決まっている。後は、順調に交際を進めるだけ。“その日”に入籍するだけだ。  1度ならず、2度も俺と光が出会った……その日に。上手くやってみせる。“軽い”と思われない様に、全てを慎重に進めた。  触れるのも。何度目か分からない……初めてのキスも。意図せず、緊張で震えた。それがまた、いい仕事をしてくれた。短い交際期間ではあるものの“本気”だと、光に伝わった。俺の全てを押し殺しても、手に入れたい。そんな想いだった。  交際を始めてからは、徐々に春香と役割を分担するように、光を見守った。会社までも迎えに行った。それは……伊東への牽制もあったかもしれない。伊東と遠くで合う視線はいつも違う意味が込められていた。
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