37.結婚生活

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「……あんまり、見ないでくれる? 」  いつも気づけば、見てしまっていた。 「あ、見てた? ……ごめん」 「そんなに、見て貰えるような、顔じゃありませんよーだ」  そう言った光に 「……綺麗だよ。だから、つい……」  綺麗だった。ちょっとした仕草もすべて。  真剣な横顔もリラックスした姿も。いつも、光の中に光を探した。いつしか光との付き合いは、記憶を失ってからの方が長くなった。もし、光が全てを思い出したとしたら、今度はこっちの記憶を失ったりしないのだろうか。今になって、何かトラブルが出てきたりはしないだろうか。  毎日、何かしら不安に思っては、光を見つめた。 「……あんまり、見ないでくれる? 」  何度もそう言われるほどに。
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