38.土曜日の約束

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「“4年前に戻れたらいいのに”って、光がそう言ったの? 」 「……ああ、そう言った」 「思い出したって事!? 」 「いや、思い出してその態度って逆におかしいだろ」京也の言葉に 「じゃあ、何で? 」春香が疑問をぶつける。 「俺も、春香と同じ疑問を持ってる。意味が分からないんだ。俺は上手くやっていたはずだ」  俺の言葉に京也が眉を寄せる。 「なぁ柊晴、“夫婦”になったんだ。もう“上手くやる”必要もないんだよ、お前が頑張る必要も、無理する必要も」 「……光……俺への気持ちが『最初から有ったのかも分からない』って言ったんだ……」 「そんな訳、ないじゃない! 」  春香はそう言ってくれたけれど俺には分からない。 「思い出したわけでもない光が、なぜ4年前に戻りたいわけ? なぜ気持ちが……分からないわけ? 」 「気持ちが無くたって構わない。光といられるなら」  そう言った俺に、二人はため息をついた。 「私から聞いてみるから、大丈夫よ、ね? 」  何が大丈夫なのか。何が本当なのか。こんな日が来るなら、心なんて……無くなればいいのに。  ……無くなったとしても、俺は光の隣にいたい。
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