38.土曜日の約束

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「光……私には何も言わない……」  春香も、無理には聞き出したくないみたいだった。知る手段を失った。光との関係は、いつしか、とても夫婦とは言えない物に変わった。  俺の方を見ない。近づくと萎縮し、触れるとビクリと肩を震わせる。俺が出掛けるとホッとしている。出張だと言うと、尚更。会話も、食事を共にすることもなくなった。  そんな光に……こんな夫婦など……意味などあるのかと思う。だけど、意味などいらない。隣にいたかった。  1年位、過ぎただろうか……こんな日が来るなら、戻りたい。思い出して……欲しい。そう思うようになった。
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