38.土曜日の約束

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 京也の店に行っては、何も話すこともなくその場にいるだけの俺に 「……戻りましょう、4年前に」  ついに春香がそう言った。意味が分からず俯いていた顔を上げた。 「あの子、柊晴くんに夢中だったんだから」  ニッと笑う春香が続けた。 「こうなれば、思い出して貰えばいいじゃない。どのみち、光に何か起こったとしても、柊晴くんは側にいるつもりでしょう? 」 「ああ、勿論だ」  京也は何とも言えない表情をしてたけれど 「まぁ、この店では……あり得ない事ではないなぁ」  そう言った。  あり得ない事ではない?とりあえず、楽しそうな春香に京也も頷いた。何より、俺の為に。 「照明は暗くして……髪は上げて、ちょっと遊ばせて……うん、4歳くらい若く見える。お客さんはなるべく入れないように……光が店に入ったら“closed”の札立ててもいい? 」 「……まぁ、仕方がないな」 「上手く行くのか? こんなの」 「昔の気持ちを取り戻してくれればいいんでしょ、要は」  てきぱきと手筈が整っていく 「ああ、その暗い性格何とかしてね、明るく、そして、アホっぽく! 」 「お前なぁ! 」  そう言って笑った俺に、春香と京也が優しく笑った。「やっと笑ったね」って。同時に、これだけ心配してくれていることに感謝した。
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