38.土曜日の約束

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「柊晴、夫婦なんだ。避けられようと、向き合え。これからも夫婦で居たいのならば」  そうだ、見守るだけでは何も変わらない。光が思い出すのを待ってるだけでは、夫婦になれない。情けない自分を恥じた。 「どう誘導するかよね、この喫茶店へ……私、光ともう一度話してみるね」  春香がそう言ってくれた。  ────  春香はすぐに光と時間を作ってくれた。光と別れた春香がメッセージをくれた。 『光も辛そうだよ、話し合ってね』  メッセージを読むと直ぐに春香に電話した。 「光、何か言ってたか? 」 『相変わらず何も。だけど単なるケンカとかへそを曲げてるだけではないのは、分かるわ。ね、柊晴くん4年前に戻ったとしても、光の記憶が戻ったとしても、今の光は今の光なのよ。あの作戦はあくまでも補助で……今の光は光なりに、柊晴くんを大事に思ってるからこそ、こんなに悩んでいるんだって、忘れないで』 「分かってる。俺が悪いんだ。光は俺を愛してくれている。それに、満足していれば、……だけど、どうしても諦められなかったんだ」 『柊晴くんは、今も光を大事に思ってるんでしょう? 』 「……ああ。今も彼女を愛してる。それは、変わらない」  きっと、光だって……俺を……。  そう思いたいだけかもしれない。だけど、別れないのはそうなのだと、悩むのは、そうなのだと……思っていた。
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