38.土曜日の約束

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 辺りを探しても姿は無く、立ちすくむ。。道を……道を走らせて何かあったら。  指先が冷え、震え出す。着信音に、ようやくスマホを持っていた事に気づく。 『柊晴くん! どうしたの!? 』 「出て行った……光が……」 『京也くんの所へ行くように言ったから大丈夫よ。無事に到着してる。あなたも落ち着いて。例の作戦このまま、実行するからね』 「え、今か? 」 『心理状態が良くない時の方が信じると思うから』  そう言った春香は冷静で……結果としてそれが功を奏した。 「春香……光は俺を……愛して無かった」  心身を喪失した状態で、そう漏らした。 「もう! 柊晴くん! 」  春香は明るく言った。 「そうだとしても、もう一度、愛して貰えばいいでしょう? 」 『私、愛してないわよ。あなたのこと。少なくとも、今は』  “今は”?ならば、“過去”は?過去は、きっと……俺に夢中だった。思い出せばいい、もう一度。  今は、愛して貰えばいい、もう一度。そう決心した。それが俺の出来る事だ。
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