38.土曜日の約束

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「それ、俺も……ついて行っていいか? 」  家を出て、俺の知らない所へ行こうとする光にそう言った。首を横に振る光に 「光の居る場所が、俺の居場所なんだ」  溜め込んだ感情が溢れる。 「ここでも、ここじゃない他の場所でも、例え4年前でも! 俺の居場所は光なんだ! 」  戻りたい。ただ……。笑ってくれていたあの日に。ちゃんと、目が合っていたあの日に。  もう一度……ただ、もう一度…… 『私、愛してないわよ。あなたのこと。少なくとも、今は』光の声が頭の中で響く。何度も。近づくと萎縮する、そう言った光に。 「もう一度……愛してくれないか? 」  そう言って触れた。顔を強ばらせた光に。きっと、眠っていなかったのは光も同じで、泣き疲れて眠る光を俺のベッドまで運んだ。1年前までは二人のベッドだった。  寝顔に口づけ、涙を拭いた。こんな思いをさせたいわけじゃない。
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