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再建の為に用意した土曜日は直ぐにやって来た。金曜日の夜には気配を消すように部屋に閉じこもる光に、前向きな気持ちを持つことも出来なくなりそうだったが、案の定、翌朝も遅くまで部屋から出てこない。意を決したように部屋から出来た光に苦笑いした。
「ドライブでも行こうか」
食事を終えた光に、そう言った。記憶を失った期間にも、よくドライブに出掛けた。たまに光が運転したりもした。……ど下手だったけれど。
玄関のドアを開けた後でキーを忘れて振り返った。
「あ、車のキー……」
キーに手を伸ばしたのは二人同時だった。随分と近い距離に、光が強く目を閉じた。
しばらくそのまま、光が目を開けるのを待った。近い距離のまま。そんな光に虚しくなる。そんなに?そんなに嫌なのかと。光がギリギリまで俺を避けて玄関の壁に背を預けた。その壁に手を着くと、短いキスをした。
「ごめん、我慢して」
それから
「もう一度、慣れて」
小さな声でそう言った。目すら閉じない光にもう一度……受け入れて欲しかった。
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