41.水曜日の約束

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 土曜日の俺達は夫婦という関係を解消するという方向性で終わりを告げた。 水曜日の俺達は恋人と言っていいだろう。  喫茶店、夜……同じ様に春香にセットして貰った少し若く見える姿が滑稽に磨かれたカウンターに写る。 「これでいいんだな? 」 「ああ」  京也の言葉に頷く。 “いい”かどうか聞かれたら、良くない。だけど仕方がない。  カラン……  静かにドアベルが鳴った。  顔を上げると、微笑む光の姿があった。  “最後”  分かってる、水曜日だって“今日で最後”だって事。来てくれることすら、無いのかと思った。それから後は何を言っていいか分からず俯く俺に 「今日は、他の客はこないよ。納得行くまで話すといい」  京也がそう言って奥へと入って行った。 「……俺の事……」  分かっているのか、ここで……言ってしまおうか。 「うん、ごめんね、柊晴」 「……待つよ。だって、先の事は……」 「いいえ、分かってるの、先の事が」 「俺の事は、愛せないの? 」 「……いいえ、私はあなたの事を愛する。今じゃなく、先……未来で。だけどね、あなたが私を愛さなくなるの」 「あるわけないだろ! そんな事! 」 「間違わないで。もう、二度と。あなたの私への気持ちは、きっと……愛ではないと思う。もう出会ってるはずよ、それに、きづけば……」  最後まで聞く事もせず、光を抱き締めた。  強く……。  それ以上は聞きたくなかった。俺達が別れるのは、ここが過去だからだと思いたかった。
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