41.水曜日の約束

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『確かめたい。変わらない事を』  変わらなければ、思い出として生きていけばいい。光に言えなかったのは、3ヶ月後の約束を無かった事にされたくなかったから。ほんの少しの希望。  だけどこの日は春香の所へ寄らずに真っ直ぐ帰った。少し若い姿に気づかないか。仄かに香るアリュールとエタニティに気づかないか……。  光は気づかないだろうか。静かな部屋に廊下の足音が響く、玄関で出迎えた。 「お帰り」  そう言って微笑む。 「ただいま」  そう言って、光も微笑んだ。  夫婦でも恋人でもない俺達の距離では、気づかない。ならば、きっと……思い出は綺麗な方がいい。
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