42.永遠の誓い

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 何もしてやれなかったからといって、指輪を贈ろうというのはあまりに短絡的なのだろうか。  ……いや、いいんだ。俺があげたいんだから。過去に送ったのは一粒ダイヤのリング。なら、今度はいっぱいついてるヤツの方がいいのか? 「そちらは、全てエタニティリングでございます。勿論、エンゲージやマリッジに使って頂いても……」  ショーケースに顔を近づけて見ていると、店員さんが説明してくれる。 「これ下さい」  即決。いや、そのネーミングは買うだろう。店員さんが驚いた顔を直ぐに笑顔に戻した。 「ダイヤが一周したものと、上だけのものと……」 「一周! 」  とにかく、もう待ちきれなかった。何でもっと早く産まれなかったんだ、光。約束の日は光の32歳の誕生日だ。  その日が来るまで、一人の家で何度も何度も光に愛してると心の中で言った。  ……光の部屋のベッド、捨てておこうか。セコい発想。  何か足りない物は……大して汚れてもいない部屋を何度も何度も掃除した。自分で自覚する、この落ち着きの無さ。  俺は俺に戻った。光に順を追って、説明しよう。大丈夫だ、何があっても。ああ、でも、怒るかな、光。久しぶりに怒った顔が見られる。それにだって顔が緩むのだから。  とにかく、もう待ちきれなかった。
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