42.永遠の誓い

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 俺達はそのまま、マンションへと入った。  玄関のドアに光が入る。少し前までは当たり前だった。今は俺が鍵を開けないと光は入れない。今日からは……また……。  リビングへ入っていく光の姿を、玄関から見ていた。何度も見た光景なのに会えば、順序よく説明して……愛してるって……伝えるつもりだった。  なのに、身体中の力が抜ける。見ていたいのに、視界はぼやけ、愛してるって言いたいのに喉が塞がれ、抱きしめたいのに、身体は動かない。 「う……」  感情と共に溢れ出す涙に、自分でも止められない。そんな俺をそっと光が抱き締めてくれた。 「ごめんね、柊晴。ごめんね、あなたの事を忘れて」 「光……愛してる」  嗚咽が漏れて、ちゃんとも言えない。 「愛してる」  光の声が俺の耳と胸に届く。俺達はそこでずっと、抱き合っていた。中に入ればいいのに、玄関で。 「……お腹すいた」 光がそう言うまで。  誕生日の為にちょっといい店を予約していた事を忘れ俺達は抱き合っただけで走る羽目になった。俺が泣き出したから。顔もまずい、色々決まらない。 だけど…… 「今日は泊まってもいいの……? 」  そう言う光に 「光の家、だ」そう言って 「ベッド、一緒ね」って一番大事な事も伝えられた。毎年「光、誕生日おめでとう」光の誕生日を一緒に祝える。おめでとうって、言える。その幸せに、なんとか人前で泣かないようにだけ気を付けた。 「大人な男性がいいな」  なんて、光は言うけれど……こんな俺も、光は好きだろう?と、心の中で言い返した。  ──再びマンションへと戻る。 「これは、光の」  そこに置いてた鍵を光に持たせた。 「今度は玄関から……中に入ってもいい? 」 光 がからかうように言った。確かにさっきは入れなかったけど。 「いいけど……その前に……」  棚に片方の腕を預けもう片方の腕を光の背中へと回した。 「もう、遠慮はしない」  そう言った。 「私も」光もそう言った。 「もう、嘘はつかない」 「私も」  キスする前に、光が一言。 「その件については、明日、問い詰めるからね」 「俺も」  ……明日は怒られるのか。楽しみだなって、思ったのがバレないように近づいた。 「……だから、今は……」  再建の為の土曜日にしたような、触れるだけのキス。  それから……想いをぶつけるように、唇を合わせた。今度は水曜日のようなキス。次第にどちらか、分からないような今の俺達のキスを。  全部を経て、ここに来た。そんなキスだった。
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