うたた寝で見る夢は

2/7
前へ
/440ページ
次へ
いいなぁ、光は。 特に騒ぎ立てる事もなくいつも静かに、だけど存在感は充分にある。 流行りの服でも、流行りのメイクでも流行りの髪型でもなく流されない。 それいて綺麗だ。 彼氏がいなくて焦る私に反して 彼氏がいない時間も、楽しんでいる。 それなのに……こんなにも人を魅了する。 天性のモテ男も、光の前では……忠犬みたいだ。 「誰、あいつ」 「ホントに」 柊晴くんとは、高校からの付き合いの私の恋人もそう言った。 「いいなぁ……」 つい、恋人の前でそう溢してしまった。 ──── やがて、光の事故を機に 柊晴くんは“落ち着いた男”になったけれど 変わらず光を愛してた。 「いいなぁ……」 つい、夫の前でそう溢してしまった。 結婚した当初から子供が欲しかったけれど 恵まれる事なく2年が経った。 確かに、子供が出来るような努力はせずに自然に任せていた。 京也くんの帰りは遅いし、拘束時間は長い。 “タイミング”がなぁ。 どう伝えたらいいんだろう。子供の話なんてしたことがなかった。 「京也くん、そろそろ……子供が欲しい」 結局、そのまんま伝えた。 「ああ、そうだな」 京也くんはそれだけ。 “そうだな”ってどういう意味だろう。 “タイミング”を自分で調べた。 この辺りだと分かっただけ。 京也くんがその気になってくれないことには……今日あたり“タイミング”だよ なんて言えるわけもなく。 京也くんが好きだって言ってくれた香水なんてつけてみても、気づく素振りも、私に近づく素振りもない。 それがどんどん苦しくなって…… それが京也くんにも伝わった。 光と柊晴くんがうまくいってないと分かったのも同時期で、いつしか私達の会話は “柊晴”と“光”に関する事ばかり。 それだって有ってよかった。 あの二人の事がなかったら、会話すら無くなっていたのかもしれない。 光の為に躍起になる柊晴くんに 「いいなぁ……」 また、そう思った。
/440ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2187人が本棚に入れています
本棚に追加