うたた寝で見る夢は

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「光と一泊旅行行ってくる」 「ああ、春香も疲れてるし、いいんじゃないか?」 “疲れてる”ことが分かっているなら “なぜ疲れてるか”まで考えてはくれないのかな。 「向こうで柊晴くんに託して、一人で参拝してくるね」 雑誌で調べた、子宝神社のページ。きっと嫌だよね、こういうの。 「そうだな」 “そうだな”か……。 目の前に、いくつかのカップが置かれた。 「試飲」 「あ、うん……」 試飲か。 「これ……か、これ」 「ん。俺は……こっちかな」 私と同じカップから香りを嗅いで、口に含み そう言った。 「暖かい格好して行けよ」 そう言って片付け始めた。 「うん。帰るね。夕食は……何にしよっか?」 「適当に食べる。先に、寝てていいから」 「はーい」 明るく言って、店を出た。 “先に寝てて”の言葉が胸に刺さる。 落ち着いた大人の男性は、何を考えてるか、分からないな。 居心地の良い空気が、いつの間にか居心地の悪い物になった。
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