うたた寝で見る夢は

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だけど 旅行から帰って2ヶ月程で、妊娠することが出来た。 嬉しくて嬉しくて、すぐに京也くんに報告した。 「良かったね」 彼はそう言った。 良かった、うん、良かったよ。 だけど……温度差。 物凄く高いテンションをそのままに、伝えたのに。 『良かったね』?私の事じゃなくて…… 二人の事なのに。 京也くんはいつも通り、喫茶店へと行った。 気にしても仕方がない。 子供も出来たし、光も帰ってくるし 良いことばかりだ。大好きな京也くんの子供だ。実際、想像を絶する嬉しさだった。 ──── 二人揃って喫茶店にやって来た柊晴くんと光に顔が緩んだ。 いや、私、光に怒られる!そう思うと血の気が引いた。光怒ると怖いんだよね。 だけど、光は怒らなかった。 落ち着いたタイミングで二人に妊娠報告をした。 「おめでとう! 京也くんも、おめでとう!」 「うわぁ、嬉しいもんだな」 やっぱり、京也くんより柊晴くんの方が喜んでくれ…… 「ああ。そうだな」 そうだな!?嬉しいのか、京也くん。 「香水、つけなくなって嬉しい」 京也くんが、ボソッっと言った。 そこ? 「え、何で!? 京也くんがあの匂い好きだって言うからつけてたのに!」 言い返すと少しばかり空気が氷ってしまった。 「俺が?まぁ、嫌いではないけど。いつ?」 「……初めて柊晴くんと、ここへ来た時。甘くていい匂いだねって……」 「ああ、ただの営業トークだよ。いちいち覚えてない」 そう言った京也くん…… 『いちいち覚えてない』何か、ショック。 全然興味なかったんだ。 「珈琲の香りを邪魔するからって、ここに、来る日はつけなかっただろ?」 「まぁ、結構強い匂いだし、急に用事で来る時以外は……」 「俺は、ずっと店だからさ。春香が、店に来てくれる以外は二人の時間があまり取れない。なのに香水つけるんだもんな。今日も来てくれないのかって、その香りがする度、うんざりしてた」 京也くんの言葉を頭で噛み砕いた。 それって…… 「な、何よ。それ……こっちは好きだって言うから…|近づきたくなったりするかなって……言ってくれなきゃ、分からないじゃない!」 「俺が店の時、柊晴が家にいんの、おかしいだろ、分かってるけど……分かってるけど……家で二人の時に……シャワー浴びてんのとか、いい気は……しねぇ……し……」 穏やかな京也くんの、乱れた言葉遣い。途中で自分でも気づいたのだろう、語尾は小さな声だった。 てか、今言いますか。その時言ってくれたら。 「あー悪い、京也。それは、そうだな。でもな、シャワー浴びてないわ。洗面所で頭洗ってただけ」 柊晴くんがそう言うと、今度は京也くんが赤くなった。 「……後は、二人で、やれ」 柊晴くんが笑ってそう言った。 「それとも、10分、目ぇ瞑っといてやろうか?」 「柊晴! お前っ!」 柊晴くんの言った意味は分からなかったけれど こんな京也くんに…… 顔が緩まないはずはなかった。
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