うたた寝で見る夢は

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「春香は結婚したいのか?」 柊晴と光ちゃんが無事に結婚して少し経ったくらいの時にそう聞いた。 「え、うん、したいよ、京也くんとなら、いつだって」 嬉しそうにそう言った。 だけどきっと……去って行く日が来る。 「俺は喫茶店やめないよ。ずっとここにいなきゃならない。……結婚すると生活が」 俺の言葉を最後まで聞かず 「あ、大丈夫、収入は私も働くし、ね? 二人で頑張ったら何とかなると思うし、帰って来てから、お店も手伝う……それに、えっと……ふ、ぅえーん!」 なぜか途中で泣き出した。幸い店は閉めた後だった。 「……何だよ」 「別れたいなら、そう言えばいいじゃない。遠回しに……言、言わなくったって」 荷物を持って、ドアへと向かう春香に先回りして、ドアへと背を預けた。 その衝撃に、ドアベルがカラン……と鳴る。 「最後まで聞けよ」春香の涙を拭う。 「店は続けたい」 「うん、良いんじゃない?」 その表情に…… 「結婚しよう」 気づけば、そう言っていた。俺に抱き付く春香の勢いに ドアベルがうるさいくらいだ。 春香の手を引くと、奥の部屋へと連れてった。 株式チャートが常に流れた画面。 「収入は、こっちでも稼いでるから、大丈夫だ」 「へぇ、賢い人は考えることが違いますね!」 ……金があってもなくても…… どっちでも良さそうな返事に苦笑いする。 ──── 「ここに来ると会いたい人に会える」 みんながそう言う。 ここはそんな不思議な空間だ。 俺もここで“会いたい人”に出会えた。 奥のプライベートルーム。そっと口づけ微笑みあった。 カラン 来客を告げる静かに鳴ったドアベルに…… もう一度春香に軽く口づけて カウンターへと戻った。
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