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いつもより違和感のある薬指に何度も目をやって微笑んだ。
「あ! 」
「何だよ」
エンゲージリングに添えられたカードを思い出して、あの引き出しへと急いだ。
カードには大文字の筆記体“A”ああ、これが“H”に見えたのか。確かめる勇気も無かった。バカだな、本当。あの時、この婚姻届とカードを見ていたら……。
背中に暖かい体温を感じた。包み込むように私を抱きしめる柊晴が
「何? そっちのリングもつけてくれるのか? 」
……そう言った。
振り向いてキスをする。
「今日、会社休もうか? 」
なんて言う彼が、とても愛しい。勿論
「ダーメ」
って言うし、彼もそれを分かって言うのだけれど。疑ったのが馬鹿らしくなるくらい。
柊晴は……
「ああ、もう、めっちゃ好き。好き、好き、好き、だぁー! 」
そう連呼している。
だけど、たまにとても大人っぽく……と言っても大人なのだけど……静かに微笑む。そんな柊晴にも……今は……懐かしいと思う。
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