43.未来へ

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「ねぇねぇ、私と柊晴くんがさぁ、デキてたとして、光はどうするつもりだったの? どっかで身投げか、出家でも? 」  春香の物騒な言葉に言い返す。 「まさか! 幸せになるつもりだったわよ? 」  ──路地裏の喫茶店。今日はお客さんは私達だけ。  あ、私達っていうのは奥のテーブルには、私と春香。カウンターには柊晴。その内側には京也くん。そんな感じ。  驚いた春香に続けた。 「だって、わざわざ譲ったんだから、二人には幸せになってもらいたいけど、だからといって私が一生不幸でいる必要もないでしょ? むしろ、幸せになって二人の前に現れる予定だったのよ」 「えっと……幸せだって見せつける為の仕返し? 」 「ううん、友達でしょ? 柊晴だって友達として見ても面白いと思うし。関係の修復というか、いざこざなんて無かった事にする為」 「光って……妙にポジティブよね」 「え、そう? それよりいいの? コーヒー飲んで」  春香のお腹に目を落としてそう聞いた。 「うふふふん、京也くんが私用にデカフェの豆買ってくれたの」  春香がお腹を撫でて嬉しそうに笑った。  幸せそうだなぁ。この二人もスッキリしたのかな。あれから、この喫茶店に“定休日”というものが出来た。 「同級生の子供欲しいなぁ! 女の子同士なら私と光みたいになって、男の子ならあの二人みたいに……男女なら……将来結婚したりして! キャーっ!! 」 「マタニティハイ? 」 「いや、違う。元々こんなんだな、春香は」  いつの間にか柊晴が私の横に座った。 「柊晴くん、6月中に妊娠したら間に合うよ、同級生!! 」 「……よし、帰って頑張るか! 」  そう言う柊晴の膝を叩いた。 「うっせぇ、お前ら、本当この店に合わねぇなー」  カウンター越しに京也くんがそう言った。
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