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横に柊晴の綺麗な寝顔があった。
どれくらいぶりだろう、彼の寝顔を見るなんて。別々に寝るように、なったあの日から。
一睡もせずに、時間を潰していたせいで、気づけば泣きながら眠ってしまっていたらしい。
それに……眠っているというのに私を離さない彼も……一睡もしていなかったのだろう。
彼の腕の中。少し前には当たり前にこの中に居た。今はただ……悲しい。そっと、彼の腕を離し、ベッドに腰かけた。
探さなければ……新しい家を。それに、仕事も新たに探さないと。結婚して正社員から契約の仕事に切り替えた。その仕事だって、あと1年もしないうちに契約は切れる。
子供が出来た時に、動きやすいように3ヶ月毎に更新が決められる仕事にしていた。今となっては、正社員の仕事を辞めなければ良かったと思う。子供のいない夫婦なんて……気持ち以外に何かつながりがあるのだろうか。
ふらふらと部屋を出てリビングで水を飲むと、自分の部屋で昨日まとめた荷物を持ち出した。
すぐに入れる物件……検索しながら、リビング、洗面所……必要な物を詰め込む。
「ここから、離れた場所で……すぐに住めるなら……どこでもいい」
そうか、どこか……地方へでも行けば……。
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