吐息

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吐息

 皆も知るように、世界には季節がある。  火の季節、風の季節、水の季節、緑の季節、氷の季節。  それぞれの季節はそれぞれの神が司る。  神々の挨拶は吐息に始まり、新たな季節の訪れを互いに告げる。  やがて入れ替わる神々はともに踊る。  火の季節の神が大胆に踊る時、地上は光と熱に満ちる。  風の季節の神と水の季節の神が競い踊る時、地上に嵐が吹き荒れる。  水の季節の神は、静かにゆったりと踊っているうちが平和である。  氷の季節は、いわずもがなだ。  ただ、どこかの神が弱っている時、つまづいた時、代替わりして間もない時などは、他の神が割って入るとも言われるな。  たとえば緑の季節に雪が降ったりもする。……今日のように。
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