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花のような姫君
森の奥に、訳ありの姫君が隠れ住んでいるという。
さらって売り飛ばすか、それとも……と、よからぬ企みを抱えた男が住処を探してやってきた。
「あら、どちらさま?」
見ると、侍女らしき女が庭先にいた。
「新しくお住まいの方が、何かお困りではないかと思いまして」
男は帽子をとり、できるだけ怪しまれないよう近づいた。
「あら嬉しい。主が喜びます」
「お若いご主人だとか」
「ええ、花のような方ですのよ」
「ご挨拶をしても?」
男が舌なめずりをしたいのを堪えながら小屋に近づいた途端、玄関扉の隙間から鞭のようにしなった蔓が伸び、男を掴んでひきずりこんだ。
「ぎゃあぁぁあ……‼︎」
小屋の中から男の悲鳴が響く。
侍女は顔色ひとつ変えず呟いた。
「人喰い花、ですけどね」
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