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 数多ある貴族のうち、名家と呼ばれるものの門柱の上には、それぞれ動物の意匠があしらわれる。  武勲をたてたある家は獅子であり、ある家は狼であり。  代々文官を務める家々は、鷹や(ふくろう)尾長鶏(おながどり)など翼あるものが多い。  ――その家は、ある時の功績により王から「印」を定められた。  曰く「そなたの家にふさわしいのは、(からす)であろう」  烏。  不吉の象徴とも取られかねないその言葉に、一瞬場がざわめいた。 「ただし」と王は続ける。 「門の片側には黒の烏、もう片側には白の烏を置くがよい」  これが、かつては呪術で王の身辺を護り固め、やがては医療で人々を救うようになった、あの一族の始まりとされる。
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