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「………さん」
「ううん、なに……」
「起きて」
「お姉ちゃん、あと5分……」
「相良さん、起きて」
優しく背中を叩きながら、耳元で話しかけられる。
静かで甘いテノール。
テノール……。
「あれっ!?」
「あ、起きた」
「お姉ちゃんじゃなかった……」
「うん。正解。相良さん、起きてくれて良かったよ」
にっこりと笑って頷く彼は、クラスメイトで隣の席に座る三神拓磨くん。
「え、ホームルームは………」
「もう終わってるよ」
「ええ〜!? 嘘、私いつ寝ちゃったんだろう…」
「あー、やっぱり覚えてないんだ」
「へっ?」
「相良さんね、ホームルーム中に寝ちゃったみたいなんだけど、最後の挨拶の時に席を立ってきちんとお辞儀をしてたから、やっぱり起きてるのかと思ったんだよね。覚えてない?」
「き、記憶にない……」
「そうだよね、あんなに揺すっても起きなかったし。変だと思ったよ」
クスクスと笑っている三神くん。
「は、恥ずかしい……」
「びっくりしたよ」
「ごめんなさい! あと、起こしてくれてありがとう。えっと……用事があったんだよね?」
そう言うと、少し困ったように彼は口を開いた。
「ぼく達、今日の放課後は図書委員だよね」
ガタッ
思わず勢いよく席を立つ。
「あ〜!! 大変、寝てる場合じゃなかった。 急がないと!」
私は走って教室を出た。
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