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広い書庫。
暗いままなのに気が付いて、電気を点ける。
「ああ、埃っぽいけど、たくさんの本たちがある空間……最高だなあ」
しばらくこの広い部屋に並ぶ本棚を眺めていたい気持ちになり、首を振る。
「いいえ、いけない。辞書を探さないと」
とりあえず、左の棚から見ていく。
「奥の方、奥ね、奥………」
見つからない。
「あれ〜、書庫にある辞書は左って聞いたんだけどな」
もう一度本棚を見てみる。
「漢字、古語辞典、和英辞典……」
──ガチャッ
「相良さん、見つかった?」
「んー、まだ」
なんせ、辞書の種類も豊富だ。
色々な出版社のものがある。
「あ、これじゃない?」
三神くんが指さしたのは、私が見ている棚の隣で、上の方にあった。
「あ、本当だ。三神くん、ありがとうね」
辞書を取ろうと手を伸ばしてみるけれど、届かない。
「相良さん、ぼくが取るからいいよ」
それでも挑戦しようとする私に、三神くんは笑いを堪えるように笑って、そっと私の手を下ろす。
「うっ……、お願いシマス」
結局届かなかった恥ずかしさに、俯いて頼んでしまう。
彼は、あっさりと辞書を引き抜いた。
「もう少しで届いたんだけどな〜」
「そうだね」
三神くんは、あっさりと流してしまう。
「あ、私が持つよ!」
「大丈夫。女の子には重いからね」
「平気だよ。力持ちだもん」
「でも、ぼくは心配だから」
やっぱり笑顔で断られてしまった。
「三神くん、ありがとう」
「いえいえ」
多分、三神くんは私が心配で書庫へ来たのだろう。
優しい男の子だから。
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