くしゃみは厳禁?な女の子

1/11
前へ
/19ページ
次へ

くしゃみは厳禁?な女の子

「ただいま〜」 玄関のドアを開けると、タオルが浮いていた。 「あ、おかえり。雨降ってきたでしょ? ()れてるだろうから、タオルで拭いてね」 廊下へと顔を出したお姉ちゃんが手を振ると、タオルは私の手へと落ちてきた。 「あ、ありがとう。お姉ちゃん…」 傘持ってなかったの知ってるんだね。 ありがたく少しだけ濡れた髪と腕をタオルで拭いて、洗面所へと向かう。 タオルを洗濯機に放り込み、自分の部屋に行こうとしたら、リビングの戸が開いた。 「おかえり、ゆめ。天気予報外れたわね〜。雨が降るなんて」 「本当だよ、お母さん」 「ゆめに傘を持って行ったんだけど、フフ、男の子と一緒だったからお母さん、遠慮しちゃったわ〜」 ゆったりとした口調でフフフフ、と不気味に笑う母。 「そ、そうなんだ。それは良かったよ」 「そうね。だって、いきなり傘が手にあったら、彼はきっと驚いたでしょう? せっかく時間を止めたのに、意味無かったわね〜」 「ハハハハ……」 乾いた笑いしか出てこない。 しかも、男の子と一緒だから遠慮したと言うけど、アレは、その、たまたまで。 一緒に帰る日もあるけど、今日は本当に偶然だったんだよ、母よ……。 「しかも、三神くん、折りたたみ傘持ってるし……。私は先に帰ってたのに、わざわざ走って来るしさ。申し訳なくて……」 「何の話?」 「ううん、こっちの話。結局、三神くん家まで送ってくれたんだよ。いい人だよね」 「そうなの? いい子なのね〜」 本当にその通りです。 明日、お礼言わなきゃな──。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加