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「……っくしゅん!」
あ、濡れたせいかな、くしゃみが…。
「あーあ、やっちゃった」
ティッシュを取ろうとして、ティッシュの箱が遠い事に気が付いた。
「わあ〜、小さいゆめだ。可愛い〜!」
超能力は使えないけど、私はくしゃみをすると小さくなってしまう。
父の言う「一寸法師の子孫」という馬鹿にしていた話が、本当だったと自分の身をもって知った。
「あらら、おやゆび姫になってるわ〜。可愛い〜。ゆめ、お母さんの手に乗ってくれない?」
家族は、小さくなった私が好きなようだ。
小さくなると、思いっきりニヤけて、だらしない顔になってしまう。
しかも、おやゆび姫なんて呼ぶ。
嫌がらせとしか思えない。
親指くらいの大きさに体が小さいからって、私にいい事ってあまりないんだもの。
周りの物は大きい、いつもはすぐにたどり着ける距離のはずが、果てしなく感じる。
くしゃみをしたら小さくなってしまうから、学校では特に気をつけなくてはいけない。
不便な事も多いけど、好きな時に体を小さくする方法を思い付いた私は、常に胡椒を持ち歩いている。
小さくなるのが面倒に感じた時期もあったけど、今は楽しむということを覚えた。
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