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「僕も……」
宇野もまた、朝倉を抱きしめて返した。すると、唇がちゅ、とやさしく塞がれ、そのまま甘噛みするように食まれ、止めようのないキスが始まる。
「ん……っ、う……」
「はぁ……、待って、服脱ぐ……」
「いいよ、もうー……。そのまんまで……」
もう今すぐにでも動きたくて、朝倉の体の一部と繋がっている奥が疼いているのに、キスを止められない。唇を食んで、舌が絡んで、吐息が混ざり合う。想いが溢れて、込み上げてくる。
すごい嬉しい……。僕、ほんとに朝倉先生とセックスしてる……。この人の恋人として、本当に愛してもらえるんだ……。
あまりに甘ったるいキスに、脳の奥までじんわりと熱くなっていく。ただ繋がってキスをするだけで、こんなにも感じるものだろうか。このまま、何時間だって宇野はこうしていられそうだった。だが、不意に朝倉が唇を放す。
「んぅ……、なぁ、宇野くん……」
「ん?」
「もうオレ、こうしてるだけですげえ暴発しそうなんだけどさ……。動いてみてもいい……?」
我慢の限界をとうに超えているのだろう。朝倉が訊く。宇野は頷いた。
「いいよ……」
「でも、マジですぐイッちゃうかもしんない……。ごめん……」
「うん、大丈夫……。すぐ終わっちゃってもいい……。でも、その代わり先生……、明日も、明後日も……、ずっと僕のことだけ、愛してくれる……?」
宇野が訊ねると、朝倉の腕が再び、きつく宇野の体を抱きしめた。その力の強さに反応して、また腹の奥が疼く。
「……当たり前だろ。っていうか、約束なんかしなくたって、オレが好きなのは、宇野くんだけだし」
「うん……」
「それ以外の人とか、あり得ないから……。絶対……」
宇野は朝倉と向かい合い、その体をきつく抱きしめた。そうして、朝倉が動き出すのを静かに待つ。だが――。
「――あ、ちょい待って」
「ん?」
「やっぱ、服脱ぐわ。そのほうがくっつけるし……」
朝倉はそう言うと、素早くTシャツを脱いで、床に放り投げた。それを見届けて、宇野は再び朝倉の唇を塞ぐ。そろそろ、我慢の限界だ。さっきから、腹の奥がきゅうっと疼いて、朝倉の体の一部を執拗に締めつけてしまう。そのせいだろう。塞いだ唇の隙間からは、朝倉の声がわずかに漏れている。
「ん……っ、はぁ……」
こんなに……、こんなに、お腹のナカが先生でいっぱいになってるのに。苦しいのに。先生が欲しい……。もっと、先生でいっぱいにしたい……。
早く、早く――。逸る気持ちを必死で抑える。しかし、重なった唇が離れた、その直後。朝倉は宇野を抱きしめ、ようやく腰を振り出した。
「ん……っ、あぁ……」
朝倉が腰を揺らし、ベッドがギシ、ギシときしみ出す。宇野は彼の腕に抱かれながら、腹の奥を朝倉のそれに突かれ、待ち焦がれていた快感に襲われた。
「あぁ……っ、あ……、せんせえ……っ」
「うぁ……、やば……」
はじめはゆっくりと、探るような動きだった。たぶん、宇野の体を気にしてくれていたのだ。しかし、ほどなくすると朝倉は、こらえがきかなくなったと言わんばかりに、あっという間にその速さを増していく。腹の奥を何度も、何度も突き上げられ、宇野はもう我を忘れてしまいそうだった。
「きもちい……っ、ああぁん……っ」
「宇野く……、あ……」
ぐちゅ、ぐちゅ……と、繋がった部分から卑猥な水音がしている。ベッドのきしむ音と、ふたつの呼吸のリズムがどんどん速くなる。この調子では、たぶん、あっという間に果ててしまうだろう。朝倉も、宇野も。そうはもたない。だが、それでも幸せだった。満足だった。
「ああぁ……っ、あ……っ」
「う、あ……」
朝倉に抱かれて、愛される。ほかにはなにもいらなかった。彼と出会って、恋をして、誰よりもそばにいて愛されることだけを願って、宇野は本当にそれだけでここまで生きてきた。だから、あとはもう、快楽に溺れて昇るだけでよかった。
「あぁ……っ、せんせ……、イっちゃいそう……」
「ん、オレも……」
朝倉の切ない表情に、胸が苦しくなる。いつも冷静な彼に、笑顔しか見せない彼に、そんな顔をさせてしまうほど、愛されているとわかるから。だから、絶頂を昇った。ためらわなかった。
「あぁ……っ、あん……」
宇野は朝倉の動きに合わせて、いやらしく腰を振る。もう、交代する約束もとうに忘却して、ただ、朝倉のくれる快楽を求め、狂おしいほどに溺れた。
「あぁ……っ、あ……、せんせ……えっ、も、だめ……、イクぅ……っ」
「宇野く……、う、あぁ……っ、でる――……っ」
「あ……、ああぁん……っ!」
朝倉先生――……!
全身が心臓になったような感覚だった。朝倉の腕に抱きしめられ、宇野は果てる。股の間の肉棒は、脈打ちながら体液を放出させ、意識は遠くなっていく。
「はぁ……っ、あぁ……、先生……」
「はぁ……、宇野くん……」
「んぅ――……」
互いに名前を呼んだ後、吸い寄せられるように唇を重ねる。挿し込まれている朝倉の肉棒もまた、腹の奥で痙攣したように震えながら、体液を吐き出している。もう全身が汗まみれで、熱くてたまらない。だが、それでも朝倉の体が愛おしくて、とても離れられない。宇野は唇が離れたあと、朝倉を強く抱きしめた。
「朝倉先生……」
「ん……?」
「って、呼ぶのはこれが最後にするね……」
「え……」
「ふたりのときは、哲也で、いい……?」
抱きしめたまま、朝倉の耳元で訊ねる。呼吸が苦しくて、声が途切れ途切れになってしまったが、彼は嬉しそうに笑みを零し、頷いてくれる。そうして、どれくらい抱きしめ合っていただろう。宇野は重だるい体をベッドに倒して、朝倉とともに、甘い余韻に浸った。
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