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第1話
暗闇の中誰かが叫んでいた。
「私あなたのこと絶対忘れないから!!!」
誰だろう...懐かしい声だけど思い出せない。
「待たせて済まなかったな...これであの子と会えるから...」
この人の声...どうしてこんなに悲しそうなんだろ...
そう言えばここは一体...うっ...急に息が...苦しい助けて...誰か...
「うわぁぁ!」
少年が起き上がると目の前には自分と同じ位の歳の少女が少年の上に馬乗りになっていた。
「し、師匠なんで僕の上に乗っかってるんですか!?」
少年はビックリしつつ頬を赤らめながらも少女の顔から目を逸らせずにいた。何故なら少女の容姿はとても美しかったからだ。ボブヘアーの綺麗な髪に整った目元そして瞳は淡い緑色をしておりそれがまた妖艶に見せる。
「だって何度呼んでもスノウ起きないし身体揺すっても起きなかったから仕方なくよ。それよりどうして顔が赤いの?もしかして熱?」
少女はスノウという少年のおでこに自分のおでこをくっつけようとした為少年は咄嗟に顔を逸らした。
「な、なんともないですから!」
「ほんと?ほんとにほんと?」
「ほんとにほんとです!」
「むぅ...スノウがそう言うなら分かった。あっそれとドロシーがご飯出来たって言ってたから顔を洗ってリビングに来てね?」
少女はそう言ってスノウの上から降りた後部屋から出ていった。スノウは先程の出来事を思い出すとまた頬を赤らめた。
「可愛いしあんな事されたら誰だって赤くなるよ...」
スノウはボソッと呟きベッドから出て洗面所に向かった。顔を洗い口を濯いでからリビングに向かおうと洗面所から出ると何かにぶつかり尻もちを着いた。
「いってえー」
「あっごめんなさい。スノウ大丈夫?」
そこに立っていたのは前かがみの状態でこっちを心配そうに見ている綺麗なお姉さんだった。どうやらこのお姉さんにぶつかったようだ。
「だ、大丈夫です!それよりローナ様今日も寝癖凄いですね。」
ローナという女性の寝癖が凄いことにスノウは気づく。彼女の髪は色々な方向に枝分かれしていた。
「何したって朝にはこの通り戻るんだからもう諦めたわ。それよりほら立って?」
スノウはローナの手を取り立ち上がった。
「ありがとうございます。」
「いいのよ。それよりリビングに行きましょ?」
そう言ってローナはリビングに向かった。スノウもローナの後に続いてリビングに向かうととてもいい香りがスノウの鼻を刺激した。2人がリビングに着くと先程の少女は既に椅子に座り食事を取っていた。
「あっおはようございます!」
挨拶が聞こえ声のする方を見るとそこには金色の髪を三つ編みにした綺麗な女性が立っていた。彼女は料理をしながら出来た皿を次々とテーブルに並べる。
「おはよ。ドロシー。」
「ドロシー姉さんおはよ!」
2人はドロシーと呼ばれる女性に挨拶し席に着き目の前に置いてあるシチューを口に入れた。野菜の旨みが詰まったスープとミノタウロスのミルクがいい感じに合っており美味しいというその一言がスノウの頭をいっぱいにした。
「今日は採れたての野菜をシチューにしてみました。どうですか?」
「とても美味しいよ!」
「ほんと?えへへー嬉しいな。」
スノウは思った。
あぁ...この笑顔を親友のアレンに見せたらきっと驚くだろうな。いつも買い物行く時のドロシー姉さん無表情だから。アレンに会っても挨拶はするけど無表情のままだし。でもそこがまたいいとかアレンは言うからあいつの好みはよくわからない。
「スノウ今日もアレンくんと遊ぶの?」
「そうだよ!今日はスライム退治しに行くんだ!」
「遊ぶのもいいけどたまには修行もしないとダメだよ?魔法は常に努力あるのみなんだから。それと街に行く時やアレンくんの前では必ず魔法使いである事を隠すこと。いい?」
「大丈夫だよ!ちゃんと師匠の言う通り隠してるし魔法に関してはまた新しい魔法を覚えたんだ!」
スノウはそう言って右手を前に出しアイスフラワーと唱えた。すると掌の上に1輪の氷の花が生成された。
「はい!師匠にあげる。」
スノウは氷の花を少女に渡した。少女は目を輝かせながら受け取った。
「あ、ありがとう!」
「どういたしまして!じゃあ僕準備して出かけてくるね!ドロシー姉さんご馳走様!」
スノウはそう言って部屋に戻った。
「意外とロマンチストね。」
「フフッ。そうですね。でもとても嬉しいです。」
少女は嬉しそうにプレゼントされた花を見ていると部屋から剣を腰に携えたスノウが出てきた。
「師匠その花大事にしてくださいね?」
「うん!」
「じゃあ行ってきます!」
そう言ってスノウは玄関から出ていった。
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