940人が本棚に入れています
本棚に追加
これ以上は口出し無用といわんがばかりに御子柴がピシャリと言い切る。御子柴の真剣な口調と目に佐野は小さく息を吐いた後いつもの笑顔で返事をする。
「分かりました。社長が判断されたのなら小宮に次ぐ期待の社員ですね! 最後に……入ってくる方の名前だけでもわかっていたら教えて貰えませんか?」
「代永……代永 景都君だ」
すぐに佐野はその謎の新人、代永 景都の為のデスクとパソコンを小宮の隣に設置したが1週間経っても1ヶ月経ってもその席は空席のままだった。
「ホントに来るんですか? 俺の隣」
小宮がそのままになっているデスクを見て佐野に声をかける。最初は部署の人たちも『どんな人が来るんだ?』と心待ちにしていたようだが、1週間……2週間と時が過ぎるにつれ関心は薄れていく。
うっすらと埃を被り始めているデスクに小宮が触れる。それを見た佐野がクロスを持ってきて埃を拭き取って綺麗にしていく。
「さあ、それは僕にも分からないよ。ただいつ来ても良いようにしておいて欲しいって言われているだけだからね……」
「インターンとか学生なんですかね? インターンなら学校忙しくて来れないとか理由あるだろうし」
代永が来ない理由を小宮は考えるが、佐野は軽く肩を竦めるだけに留まった。
「僕は全然分からないよ。さ、小宮も仕事に戻って」
「俺、仕事は出来るけど時々何考えてるか分からないから部長の事苦手ですね。きっとコイツが来ない理由も知ってると思うんですよね」
佐野も御子柴が何かを知っているとは思い何度か聞いてはみたものの代永の採用は社長が決めたという事以外は何も聞けなかった。
「じゃあ、小宮が部長に聞いてみれば? いつもの感じで聞いたら答えてくれるかもよ」
「はぐらされるのがオチの様な気がするんで無駄ですね」
『仕事に戻ります』と小宮は自分のデスクのモニターに視線を戻した。
更に2ヶ月経ってもデスクは空席のままで、そのデスクに人が座る事になったのは設置してから4ヶ月近く経ってからの事だった。
最初のコメントを投稿しよう!