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赴任
「よーしみんな準備はいいかな? 今日から新年度、張り切って頑張りましょう!」
株式会社M i C。ここは元々はパソコンのシステム開発から始まった意外と歴史がある会社だが、スマートフォンやタブレットの普及に先駆け、個人向けや企業向けのアプリを次々と開発し急成長を遂げ、今ではスマホやタブレット、パソコンを持つ人なら知らない人はいないぐらいの大企業にまで発展した。
様々な部署があるなか、ここ【開発営業部】は企業向けのアプリ開発と営業に特化した部署だ。
開発営業部は企業向けアプリを担当の顧客向けにカスタマイズ、売り出しを行なっている。顧客ニーズの細かいところまで手を届かせつつ新たな販路拡大と顧客の囲い込みをするのが主な仕事だ。
開発営業部の部署内で拳を高々を上げているのは佐野 國臣だ。既に入社してきている社員もどっと笑いながら『おー!』とノってくれる。
佐野は部署内ではいつも明るく率先して社員に話しかける。30代に入ったばかりだというのに屈託のないその笑顔と明るさは先輩、後輩関係なく慕われていて部署内のムードメーカー的存在だ。
「準備はいいかって聞きたいのはこっちだ。佐野係長」
「あっ、課長! お早うございます」
後ろからかけられた声に佐野はビシッと敬礼ポーズをして応える。鼻息荒く胸を張って敬礼している佐野を見て上司の穂高 賢志郎は早速頭を抱える。
「まだ代理だ。今日から係長昇格だからって浮かれまくってるな」
「そういう穂高課長代理だって今日からじゃないですか。落ち着きすぎですよ」
「俺はお前と違ってこの間まで係長だったからな。今日から佐野がウチの係長だからな。新人や社員を盛り上げて引っ張って行くのが係長の役割だから頑張ってくれよ」
「はい!」
MiCは先日年度末を迎え今日から新年度を迎えた。部署内には真新しいデスクとデスクトップパソコンが一台置かれていた。今日から入社する新人社員のデスクだ。
開発営業部は主に外勤務が多い営業社員と内勤務が殆どのエンジニア社員に分かれる。因みに佐野は営業社員、穂高は体つきもしっかりとした体育会系にも関わらずエンジニア社員だ。今回入ってくる新人は営業社員だと聞いている。会社ならではの性質なのだろうか、新年度で入ってくる新人よりも転職組で入ってくる社員の方が圧倒的に多い。
佐野は係長としての初仕事に胸を膨らます。
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