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兄上以上に父上の説得にこんなにも時間が掛かるとは予想外だった。
城に着くなりスヴェンは足を速めた。
いつもよりガランとしているのは兵士のほとんどが戴冠式の行われている大聖堂に割り当てられているからだろう。
しばらく歩いていると中庭に何やら派手な人だかりが見えてくる。
あれは戴冠式の付き添いで来たであろう着飾った貴族の婦女子達だ。
貴族当主の娘やその親族といったところだろう。
女というのはかわいいものが好きだ。
やれやれ。
さしずめ、ネコでも見つけたのだろう。
キャーキャー何かを囲んで囀る婦女子を横目に通りすぎようとした時、視界の隅に見たことのある金髪が映った。
「エリアス、何をしている。」
ふいに声を掛けたのは失敗だった。
早く行かなければ遅れるぞ、
そう言葉を続ける前にあっという間に派手なドレスに囲まれる。
「あら、スヴェン様ではないですか!」
「スヴェン様もエリアス様同様、素敵ですわ。」
「もしかして、その恰好、スヴェン様も臣下になられるおつもりなのですか?」
身に纏った国王自身と臣下にのみ許された純白の軍服を見てはカッコいい、とキャーキャー言ったり、 嫌だわ、だとか、信じられない、と呟いている。
女は女優だ。
本心が見えない。だから苦手なのだ。
「スー兄さん、、、」
エリアスが私を巻き込んだことを申し訳なさそうにこちらを向く。
まったくだ。
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