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 中学の頃までは優等生なんて呼ばれていた。  勉強はそこそこの努力でそれなりに出来たし、運動だって得意だった。だからあんな、真面目に勉強する奴らばかりが通う高校に進学してしまった。  高校生活が一年も過ぎた頃、俺は授業も放課後も窮屈で仕方がなくなっていた。  勉強はつまらないし、進路も決まらない。やりたいこともなければ将来の夢も無い。毎日ぼーっと過ごしてばかりで、成績はあっという間に落ちていった。  鬱屈していたんだ。  なんだか無性にムシャクシャして、やさぐれた気分になって、俺は気晴らしに安直な校則違反をしてみることにした。  髪を染めて、制服をだらしなく着崩して、授業をサボって、学校の屋上でタバコを吸って、ゲーセンに夜遅くまで入り浸り始めて――  だけどそんなことをしたって、どん詰りの日常に大きな変化があったわけじゃなかった。  担任に怒られて、ちょっとの謹慎を言い渡され、それから母さんをキレさせた。たったのそれだけだ。
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